絶対防御研究所 Log3


クユの激突、ユヒトの訪問 そして宿泊

朝になった・・・



「んじゃ、こいつが寝てる間に連れ帰ります、迷惑をかけて申し訳ない」

申し訳無さ気にユヒトが言う、肩には眠ったままのクユを担いでいる

「ん、まぁいつでも来いよ、軽いけがとかなら俺が治療してやるしな」

ホムラが頭をボリボリ掻きながら言う

じゃっ といってユヒトが飛び去った

「ふー・・・結構あの二人、大変そうだな・・・」

ホムラが大きく息を吐きながら言った

「でも、なんだかんだで上手くやってるじゃないか、俺たちみたいにさ」

アマツが見送りながら言った

「第一、ホムラと私達はあの施設に居た頃から一緒だったじゃん?それに、ホムラの作ってくれたスピリットチップがなかったら・・・
・・・今頃、ここにこの体を持つ誰かはいるだろうけど、私達はいなかったしね」

ミコトがちょっとうつむきながら言った



1年前、惑星フォニム 某都市の大きな道路、ちょうどこの日は歩行者天国(いわゆる車が車道を走ってはいけない日である)だった

アマツは「四紀天津」として、ミコトは「希美月尊」として、この時はまだ生身の体で生きていた

また、この時すでに二人はホムラに万が一の時、魂を保護する為のチップ、「スピリットチップ」を埋め込んでもらっていた

「ねえ・・・あの飛行機、変じゃない?」

尊が指を指す、たしかに変だった、4基あるエンジンのうち一つから煙を吹き、明らかに傾いて旋回している

「確かにやばそうだ・・・ってかこっちに向かってないか・・・?」

その時だった、予想以上に飛行機の速度が速く、着陸するには早過ぎる速度で

ランディングギアを全て露出してこちらへ明らかに着陸する耐性を取ろうとしていた

悲鳴、逃げ惑う市民、歩行者天国のその場所は一瞬にして地獄絵図と化した

棒立ち状態の尊をかばって回避しようとする天津だが、相手が大きすぎた

ドゴッ

天津の背中に大きな衝撃が走る、胴体前方の車輪を回避できたが、後方の車輪を回避しきれずにぶち当たってしまった

尊を離すまいと力を振り絞り抱きしめる、が、天津も尊もその時点でショックによって死亡していた

その瞬間、スピリットチップが作動した・・・その作動を、その知らせをホムラは研究所で聞いた

「んな・・・まさか・・・嘘だろ!?」

勢いに任せて試作救助メカノイドを起動、搭乗し事故現場へホムラが向かった

そこでホムラが見たものは、まっぷたつに割れ、主翼がビルにめり込んだ飛行機と、周りに倒れている何人もの住民だった

すぐに試作救助メカノイドのサーチ機能を動作させ、救助可能な住民を保護、出血部位の修復を一気に行う処理を命令した

スピリットチップのビーコンのおかげで天津たちはすぐに見つかったが、天津はとてつもなく酷い裂傷とさらに背骨の複雑骨折、内臓破裂など、
損傷がとてつもなく酷い、尊の方も天津が抱きしめ守っていたせいか比較的無傷に見えるが、やはり大きな衝撃による内臓破裂などで損傷が酷かった

救急隊員に修復処理の完了した住民を任せ、絶対防御研究所のシークレットラボに天津と尊の亡骸を運び込んだ

すぐにホムラはスピリットチップを取り出した、すぐ近くにはまだAIチップを組み込んでいない人型のロボットが4体

S-X-01とS-X-02にスピリットチップを取り付けて、初回起動時のみ必要な核融合炉の最適化を完了させたとき、アマツとミコトは、意識を取り戻した

また、この時スピリットチップを取り付けられなかった2体は、のちにAIチップを取り付けられたコードMet-Del/Leteである


「あの時は本気で驚いたよ、万が一のために備えておいたスピリットチップが動作するとはな・・・」

ホムラがミコトの肩に手を置きながら言った

「俺達の体は例のシークレットラボに保管しているんだろ?」

アマツがホムラに問う

「もちろん、一応コレでも一度体から離れた魂を再び体に戻し、生命の力を再び動かすための研究を続けている、俺が此処で作ったお前たちの体以外の
全ては、二人を元の体に戻すためだ、もちろん長い時間がかかることを想定して俺自身にもスピリットチップを埋め込んだ、もし作動したときは取り付けを頼む」

「もちろん、それも大事だけど、ホムラの幸せも大事だからね?そこだけは間違えないでね」

あぁ・・・とホムラはつぶやいた



突然、来客を知らせるアラームがなった

「こちら絶対防御研究所、管制室、なにか用か?」 ホムラがいつものように返す

「あー・・・うん、ちょっと用事、昨日の事でちょっとホムラに謝りたいことがあってさ・・・」

テトだった、ホムラはゲートロックを解除し、招き入れた



テトから事情を聞いた、やはり予想通りクユはテトにじゃれ付いて投げ飛ばされ、そして研究所に激突したそうだ

「本当にごめん、ボクも軽率だったよ」

なんども頭を下げるテト

「や・・・そんなに謝られても困るんだけども、こっちの施設に異常は発生しなかったし、特に問題なく事も済んだし、うん」

頭をボリボリ掻きながらホムラがいう



なんだかんだで結局打ち解けたようで、帰りにはテトにフランスパンを1本渡した

「フランスパンありがとー!次はこんな形じゃなくてちゃんと客人としてくるおー!」

おー、とホムラが返した

「すっかり打ち解けたな、ホムラ、気難しい君がそこまで打ち解けた表情してたのは久しぶりに見た」

アマツが言う

「やー・・・性別キメラってのは彼女の動画とか見て知っては居たけど・・・うん、あれだ、平謝りをなんどもされるとこっちはどうしていいかわからんのだよ」

「ま、それがホムラのいいところでもあり悪いところなんだけどもねー」

ミコトが割って入った

「まぁ小さい頃からの付き合いだから、その辺は十分理解してるけどねっ」

あぁ、とアマツも呟いた

彼らは同じ施設で物心付く頃から一緒だったり・・・(作者談

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